花のいのちは

三ヶ寺合同研修旅行

初島 林芙美子来島記念碑 解説

風も吹くなり

雲も光るなり

生きてゐる幸福は

波間の鴎のごとく

漂渺とただよい

生きてゐる幸福は

あなたも知ってゐる

私も知ってゐる

花のいのちはみじかくて

苦しきことのみ多かれど

風も吹くなり

雲も光るなり

村岡恵理著『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』より


九月六日

午前9時 宮古島の北北西約90キロの海上で 台風13号が 発生するなり

今日は 一年前から計画した 三ヶ寺合同研修旅行で熱海にやってきた

幹事一押しの小田原は 渋滞のせいであっさり却下され 初島のんびりプランに変更されてしまっていた

初島は下関にある六連島によく似ていて 岸から一里あまりと これもちょうど同じようである

響灘を聴聞に通ったという 六連島お軽の話は お説教でよく聞かせてもらったが

高速船なら訳もない距離であっても うず潮で名高い関門海峡を 小舟を漕いで渡ったかと思うと恐ろしい

それにしても 明日には嵐がやって来ようとゆうのに 相模湾は穏やかである

 

初島の桟橋に着くと 休憩所に林芙美子来島記念碑があり 側に解説が置かれてある

花の命は短くて 苦しきことのみ多かりき

これも知らぬ人のない一句だが その心根は おおよそ知る術もなく意味深な言葉である

森光子さんの『放浪記』には ついに行きそびれてしまったのだが 今にして悔やまれてならない

私はいったい何を 恐れていたのだろうか・・・・

月の光を溶かしてうず潮は昏く流れている

速度も見えぬながら 只 海鳴りの音を立てて はてもなく うず潮は流れているのだ・・・・

『うず潮』は このようにくくられているというが いったい初島にも うず潮などあるのだろうか

あの日熱海の街灯りは 林芙美子さんの目に 故郷から望む関門海峡のうず潮が 映っていたのかも知れない

 

知らぬ土地にやってくると 普段なら思いもしない事など考えるものだ

念仏の味わいも 歳とともに変わってゆくものである

生きてゐる幸福は 波間の鴎のごとく か・・・・

青く静かな海を眺めていてさえ お念仏と成ってくださる なんまんだぶ

風も吹くなり

雲も光るなり